一番つらい調教(前編)の続き。
私が長期出張に行っていたとき。
美佳から電話があった。
その声はすごく切なく、電話を受けたときには、何かあったのか?と心配になったほどだった。
でも、特別に何かがあったわけではない。
ただ、美佳が言ったのはこういうことだ。
「御主人様にお会いできず、お声も聞けず、なにも無いのが、本当に辛いです…」
と。
だが、その辛さというのが、私にはその時、あまり理解できなかった。
どちらかというと、2週間、調教なしになるので、体を休め、気持ちも休まるのだろうなんて思っていたのだった。
だから、
「調教されないんだから、たまには羽を伸ばしていればいいだろ」
なんて返していた。
だが、それを言ったら、美佳は今度は涙声になった。
私は、正直驚いた。
「そんなこと…。私、この間、最後にご調教くださったときのことが、何度も何度も思い出されて…。それが体に残っていて…。寝る前にも目を瞑ると、そのことばかり考えてしまって…。やっとの思いで耐えてるんです。でも、もう、限界です」
「限界って…。お前、大丈夫か?」
あまりにも美佳がつらそうに言うので、つい素で聞いてしまったほどだった。
「大丈夫じゃないです。切なくて、耐えられません」
もう、美佳は泣いていた。
「でも、俺が帰るまでにはあと1週間ある。それまでは、耐えろ」
「そんな…。無理です」
かなりきっぱりと美佳は言い切った。美佳にしては珍しい。それほど切羽詰っているということのようだった。
「無理か…」
「はい。ですから、一言でもいいんです。私に御主人様を感じさせてください。奴隷で居ることを確認させてください。そうしたら、もう少し耐えられる気がしますから…」
「はぁ…。本当に困った奴だな」
「もうしわけございません。でも…」
「わかった。とりあえず、泣くな。いいな?」
「はい…」
と、ここまでは良いのだが、私は前編で書いたとおり、電話での調教なんて、それまで、ほとんどしたことがなかった。
だから、何を言えば、美佳に奴隷であることを確認させられるのか?ということに私は悩んだのだった。
そして、しばし考えて、やっと何とか思いついて、口調をしっかりと御主人様のものにしてから、言った。
「お前はなんだ?ちゃんと自分で言ってみろ」
「はい。私は、御主人様の性奴隷です」
「たったそれだけか?」
「あ、いいえ…、その…。私は、すぐに淫乱なことを考えてしまう、卑しいメス豚です。御主人様のことを思うだけで濡らす、はしたないマゾ牝です」
「そうか。じゃあ、今はお前のあそこは濡れているんだな?」
「はい…。汚く濡らしてしまっています」
「それなら、一つだけ許してやる。自分の指を、俺の指だと思え。いいな」
「私の指を?」
「そうだ。思えるな?それとも、俺の指がどんなものか、もう忘れたか?」
「そんなことありません! 御主人様の指、忘れるわけがありません」
「じゃあ、その指で、愛液をすくって、それをクリトリスに塗ってイクまで愛撫しろ」
「はい。ありがとうございます!」
美佳は、本当に嬉しそうに言って、電話の向こうで自慰を始めた。
「御主人様の指に愛撫されて、本当に嬉しいです…」
そう言いながら、やっぱり美佳は泣いていた。
「これで、俺を感じられるか?」
「はい」
「お前は俺の奴隷だ。だから、お前の指は俺の指だ。わかるな?」
「はい」
「俺が帰るまで、その指は貸しておく。大事に使え」
「はい…。でも、早く帰ってきてください。お待ちしています」
「ああ」
そう言って、電話を切った。
これで、美佳は大丈夫だと思ったのだが、それから1週間、美佳は毎晩、電話をかけてきては、私にその切なさを訴えていた。
また、出張から帰ったとき、それを待ちかねたように、というか、私の帰りを空港まで迎えに来たのが、理沙だった。
そして、理沙も、ほとんど泣きそうな顔で、調教をしてくれと、懇願してきた。
「2週間はあまりにも長かったです…」
といって。
こんな感じで、2匹の奴隷は、長期間、調教されないこと、というか、私が近くに居ないことが一番辛いようだった。
放置調教とでもいえばいいか。
しかも、ちょっと縛って数時間放置するとか、そういうことではなく、御主人様である私が居なくなるということ。
だからこの時、やっと私は考えていたことに結論が出たのだった。
奴隷にとって一番辛い調教はなにか?ということに。
それは、奴隷の中にあるM性を発揮できる場所、すべてを素直にさらけ出しても良い場所、安心出来る場所、それが奴隷にとっての御主人様であり、その私が居ないということは、奴隷の精神を不安定にさせ、そのことが奴隷にとっては、一番堪えるのだということに。
だが、それがわかって、私は少し落胆したのだった。
というのも、一番辛い調教がわかったなら、何か奴隷に罰を与えるときに、それを使おうと思っていたのだ。
そのために考えていたから。
だが、私が2週間も離れて居なくなるとか、そんなことはそうそうできるわけがない。
そして、何よりも、奴隷が心の支えにしている部分を一時的にせよ失わせることが、たとえ辛い調教だったとしても、本当に良いことか?というのも同時に思ったのだった。
奴隷の心の支えとしての御主人様というのは、やっぱり、きちんと存在していてやるべきなのだろうというのが、私の出した結論だった。
だから、この出張のときのような本当に辛い調教(状況)というのは、私はあまり作るべきではないと思った。
もちろん、私の仕事はたまに出張があったし、実家に帰省したりすることもあるので、常に奴隷のそばにいてやることはその後も出来なかったのだが、
なるべくそばにいてやること、奴隷の居場所として、いつでも素直にM性を開放できる場所として、安心して私を頼れるようにしておいてやることというのが、多分重要なのだと思って気をつけるようにしていた。
奴隷を焦らし、我慢をさせるということも調教の一つと考えると、私の対応は、少し甘いのかも知れないが。