前回のエントリー、普段と文体も違うし、分量も大幅に少なかったので、驚かれた方も多いかと思う。
「どうかされたのですか?」という、ご心配をしてくださるメールなんかも頂いてしまった。
別に奇をてらったわけでもないし、私に何か良からぬことがあったわけでもないのだが、どうしても書きたい気持ちが湧いてきて、書いてしまったというのが実際のところで、あとから見るとちょっと照れくさい気もしているが、思ったことを、ある程度、ストレートに、そして簡潔に出せたのは良かったなと思っている。
だから、これからもこういうエントリーがたまに出てくるかも知れないが、あまり驚かないでくださればと思う。
あれも私だし、今までのように書くのも私だから。
ブログを始めてもう2年半以上になるのに、未だに試行錯誤が続いているという、ある意味、私らしいところだと思って欲しい。
そして、今回のエントリーは、今までのように書くので、安心?していただければと思う。
前に、奴隷の性格とそれに対する接し方の話(”
強気な奴隷と秘密の心”や”
気弱な奴隷と魔法の時間”)を書いたことがあるが、今回もそういう話。
以前のエントリーでは、おおまかに、奴隷の性格を、強気と気弱とに分けて考えたのだが、その分け方で言えば気弱な部類に入るであろう、ある奴隷の性格と、その主従関係に対する考え方のこと。
エントリーの題名を、”雨ざらしの捨て犬”としたのだが、調教の時や、私と接する時に、そういう感じの態度をとっていたことのある奴隷なので、そんなイメージで読んでもらえればと思った。
最近は、捨て犬というのもあまり見かけなくなったようにも思うが、私が子供の頃には、ダンボールに入れられた子犬が、道端に捨てられているのを見かけることがあった。
学校帰りなんかに、何度か、そういうのを見たことがあるし、最後まで面倒を見る気もないのに、その時の”可哀想”とか”可愛い”という気持ちだけで、学校で残してきたパンをやったり、家に連れ帰りたくなったり、したものだった。
最近は、そんな犬を見る機会はなくなったが、それでも、イメージとしては伝わるのではないかと思う。
雨中、捨てられた子犬が、ダンボールの中でビショビショになりながら、弱々しく鳴き、震えているというシーンは、悲壮感をもって頭の中に描かれる。
そんなイメージを抱かせるような奴隷。
気弱な奴隷の話のところでも書いたように、自己主張は殆ど無く、私にされることをそのまま受け入れるというタイプだった。
本当に、抵抗があまりない。
ただ、その奴隷は、気持ちが体の反応に出ていたのだった。
おそらく無意識に反応していたのだろうと思うが、体が震えることがよくあった。
最初は、私に見つめられただけでも震えていた。
触られても、キスされても、抵抗はしないし、「嫌です」とか「やめてください」とか、そういうこともいわないのだが、震えている。
顔も、泣きそうになっている。
だから、一度聞いたことがある。
「お前、俺が怖いのか?」
と。
でも、その奴隷は首を横に振った。
怖いとは言わない。でも、本当に震えているから多分、怖いのだろうと私は思っていた。
「怖い」ということすら言えないのだろうと。
御主人様のすること全てを、そのままに受け入れることが、その奴隷にとっては主従関係なのだろうと私は最初、思っていた。
たとえ、それが恐怖だったとしても。
「嫌です」、「やめてください」といった、直接的な拒否の言葉だけではなく、「怖いです」「痛いです」といった、私の調教に対する、多少否定的意味を持つ言葉ですらも、言ってはいけないと思って、封印しているように見えた。
そうなると、1つの疑問がわく。
なぜ、私の奴隷になどなったのか?ということ。
あまりにも震えていることが多いので、それを聞いたこともある。
「なんで、怖いのに、俺の奴隷になった?」
もう、その奴隷が怖いと思っていることは、私は確信していたから、それを否定していることは無視して聞いたのだ。
「怖くはないです。御主人様が、とても優しそうだったから…です」
奴隷はそう言った。
やっぱり、怖いという感情は否定するのだが…。
私にはそれは信じられなかった。直接的に私のことではないとしても、何かを怖がっていると思えて仕方がなかった。
優しそうだと思って奴隷になった相手(やその行為)に対して、怖いと感じるとするならば、それは最初の想いと、感じている現状が、全く違うということだ。
それは、まずい。
奴隷にする前の、お互いを確認する話し合いが足りなかったのではないか?
だから、
「実際に奴隷になってみたら、違ったか?」
と聞いていた。
もしも、違うということで、思っていた満足感が得られないのであれば、主従関係を解消してやる必要もあるのではないかと思った。
でも、奴隷の答えはそうではなかった。
「いいえ、私の思っていた通りです。御主人様は私の思った通りの方でした。奴隷にしていただけて、とても幸せです」
奴隷はそう言う。精一杯の笑顔で。
「俺の奴隷になったこと、後悔しているわけではないのか?」
「そんなこと、絶対にありません。でも、そんなに私に聞かれるということは、御主人様、私のこと、お嫌いなのでしょうか?」
そんな事まで聞いてくる始末。
この段階で不安気に、泣きそうな顔になっている。
だから、私の奴隷でいたいという気持ちを、かなり強く持っているのはわかるのだった。
でも、それなら、なぜ、奴隷は震える?
私はわからなくなった。
最初の頃に、緊張で震える奴隷は居る。
調教で、何があるかわからないという不安に、震える奴隷も居る。
でも、それは、そのうちに解消されていく。慣れていく。
だが、その奴隷はいつまで経っても震える。
それは恐怖からくるもののように私には思えるのだった。
調教に対して、ある程度の恐怖心というのは、奴隷は持つものだろうと思う。
それでも、一方で、満足や快感があるから、調教というのは成り立つ。
なのに、その奴隷の震えからは、満足や快感ではなく、恐怖だけがあるようにしか思えない。
それではただのレイプになる。
言葉ではちゃんと同意しているから、本当のレイプとは言えないが、私との主従関係に、恐怖だけしか感じないなら同じ事だ。
私は考えた。
この奴隷の恐怖心をどうすれば取り除けるのか?
取り除けないまでも、弱めることができるのか?
でも、考えてもよくわからなかったし、最初は何も思いつかなかった。
だから、恐怖を感じている人に対して、普通にやられていることから試してみることにした。
ただ、抱きしめる。
首輪をつけ、服を脱ぎ、挨拶をして、私を見上げている段階、私に見つめられているだけで、すでに、肩が震えていたりする。
だから、その時に、そのまま奴隷を抱きしめた。
調教というにはあまりにも甘いのだが、もうその時は、奴隷の震えをなんとか止めないとどうにもならない気がしていた。
奴隷は驚いたのだろう。私に抱かれたままで、言った。
「ご、御主人様、何を…」
「抱きたいと思ったから抱いている。文句があるか?」
あくまでも調教の一環というか、私がしたいようにしているだけだと奴隷には言う。そうでなければ、多分納得しないだろうと思ったから。
「文句なんて、そんな事、ありません。でも…」
「でも?なんだ?」
「いえ…。私、これでいいのでしょうか? 御主人様にご満足いただけているのでしょうか…」
「お前の抱き心地は、悪くない」
「そう、ですか…。良かった」
奴隷は本当にホッとした顔をしていた。
それでもやっぱり震えている。私は奴隷を抱きながら、これではダメかも知れないと思っていた。
もう少し、何とかする方法を考えないとと思った。
気弱な奴隷にするように、調教のあとに話をする時間を長くとって色々なことを話してみたりもしたのだが、闇雲に話をするだけでは、この奴隷が恐れているものがなんなのかは、私にはよくわからなかった。
どうすればいい?
そのことで、私は頭を悩ませていた。
次回に続く。